派遣先企業の声
MSDアニマルヘルス・シンガポール 宮田雅人氏(プロジェクトリーダー)
1・学生の方々に対する印象
シンガポール探検隊の皆様にお会いするにあたって、思い出すのは自分が若かった頃のことです。今でこそ海外生活も10年を越え、たまに日本に帰ると逆になにもかもが珍しい昨今ですが、若かりし頃の私にとって飛行機に乗って外国へ行くなどと言うのは夢のような話で、お役所にパスポートを作りに行くことを誇らしく思ったのを覚えています。そうやって私が初めて訪れた外国が、シンガポールでした。20年後にそこに住み、外資で働くようになるなど知る由もなかった学生の私は、見るもの触るものすべてが物珍しく、キョロキョロするのに大忙しで、傍から見ればおそらく挙動不審だった事と思います。
このような個人的な経験から、シンガポール探検隊の若い皆さんだってきっと、当時の私と同じように舞い上がっておられるだろう、などと勝手に想像していました。しかしお会いしてみると、こちらが拍子抜けするくらい落ち着いておられ、受け答えも的確かつ無駄が無く、知性と教養を感じました。そして皆さん背筋がまっすぐ伸びて姿勢が良い。私らが学生の頃とは何かが違う。私が若者であった頃は、私も含め若者は未熟で危なっかしいものであったはずなのです。内外の報道から日本の落日が喧伝されるのを心配して見守っていましたが、その裏側で日本にはこんな学生さんたちが育って居たのかと、とても頼もしく感じました。もちろんこれは、小松先生、堀部さんの人選の確かさがあってのことですが、お会いできなかった他の学生さん達だって基本的にはそんなに変わらないはずです。人材の豊かさに時代の流れを感じ、しばらく離れている間に日本は立派な国になったのだな、と嬉しく感じました。
余談ですが、少々危なっかしさが残る学生さん(今も居るはずです)を採用し連れてきたら、おもしろいかもしれない、などと不謹慎なことも考えました。今回来られたような優秀な学生さんを連れてくれば、順当にいろいろ吸収してくれてプログラムが成功するのは当然ですが、幼く危なっかしいけど見所のある(かもしれない)学生さんが異文化に触発され大爆発・大変身する(かもしれない)ことに賭けてみるのも、その後の活躍(するかもしれない)を考えれば、安い投資だと思います。
閑話休題。今回(2013年夏)御来星の4名の探検隊のみなさんと何度かお会いして、若者らしいまっすぐな話し方と、何にでも興味を持ち、学ぶことを楽しむ姿勢をまぶしく感じました。きっとこのような方々が、未来の日本を引っ張って行ってくれるのだと確信しました。残念なことは、若者に向かって「昔は良かった。今の若者はなっとらん」などと言えなくなってしまったことくらいでしょうか。自分の順番が来るのを楽しみにしていたのですが。
2・本学がこのたび行ったキャリア演習に対する感想、および大学のグローバルキャリア教育に対する期待
英語を話せるのは当たり前、英語も通じないところに研修にいこう、という先生方の発想の斬新さに大変驚きました。そして、日本はいつの間にか世界の最先端を切り開く先進国になっていたことを強く認識させられました。私達の年代が考えつく海外留学は、森鴎外や野口英世がそうであったように、外国にしかない何か進んでいることを日本人代表として学び取り、それを持って帰って日本を良くするために活かすイメージがありました。つい最近まで、特に学生が海外に渡るのはそのような理由付けがあったはずです。しかし今日、これは外国に居て、また、たまに帰国しても強く感じることですが、いつの間にそうなったのか日本人の民度の高さ、マナーの良さは世界的に見ても類を見ないほど洗練されたものへと変化しています。科学技術や工業は文字通り世界をリードしていますし、輸出・発信される幅広い日本文化は驚きをもって世界から歓迎を受けています。その一方でG7諸国の凋落ぶりは日本と軌を同じくし、各国で先を争うように途上国との良好な関係を模索しています。
学生を途上国に派遣する試みは今のところ前例も少ないと思いますが、しかしこれから海外に出ようとする今後の日本の若者たちにとって途上国が魅力的な選択肢であることは、現在の人の流れを見ても明らかです。学生のうちの経験は将来の就労においても大きなアドバンテージになるはずで、有用なストラテジーだと感じました。なにもかもが揃っている夢の国から来た若者が、明るい未来に向かって昼夜いとわず働く逞しくしたたかな途上国の人たちとどう対峙するのか、日本の常識やモラルが全く通じない局面で自分たちの立ち位置をどうセットするのか。海外に住む私自身も一緒になって考え続けなければならない、避けて通ることのできない難しいテーマがたくさんあります。願わくば自国(日本)の利益だけでなく、和の心を尊ぶ日本人ならではの世界最先端の心意気で全ての人たちが幸せになれるよう、まずは若者ならではの特権を活かして地面に近いところから、他国との関係を模索していってほしいと願っています。
最後になりましたが、派遣先の安全確保はもちろん最優先事項で、このために小松先生と堀部さんが行っておられる細やかな心配りを目の当たりにしますと、これは大変な仕事だと思わずにはおれません。さすがに大学生ともなれば自分の身は自分で守るのが当然ですが、効率よく準備できることもあると思います。特に活きた情報は大事だと思いますので、探検隊の経験から得た派遣先の安全事情、生活における禁忌事項や豆知識などを、網羅的に蓄積しマニュアル化し、これを講義などにご活用いただければ、後進のためにも何かと役に立つのではないかと考えます。
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