派遣先企業の声
科学技術振興機構シンガポール事務所 矢野 雅仁氏
私がお会いした探検隊員の方々は、両親の仕事の関係や留学などですでに海外での経験があり(男子学生の渡邉君はじめてのようでしたが、ルームメートと意気投合していました)、皆さん非常にリラックスされてシンガポールを満喫していたような気がします。私自身は残念ながら、皆さんが科学技術振興機構(JST)の事務所を訪問した時、そして週末にテーブルを囲みながら座談会を開いた時の2回しかお会いする機会がありませんでした。それでも、その2回を通じて、みなさんがしっかりと自分の考えを持ち、初対面の人に対してもきちんと応対している態度をみて至極感心させられました。と同時に、自分の学生時代を振り返り、いまさらながら若かりし頃の自分に対して反省してしまいました。
巷では、若者世代の引きこもりが指摘されています。そして大人達がこぞって、若者の非国際化や活気のなさなどを批判していますが、私はそれほど悲観視しておりません。むしろ、そうやって息巻いている大人達の一体どれだけが国際感覚を持ち合わせているのかと疑問を持ちます。
私自身は20年以上海外で生活し、これまで多くの日本人に海外で接してきました。そして、老若男女、様々な人との出会いの中で特に感じたのは中高年の日本人男性のあまりの国際感覚のなさでした。
私はニューヨークにのべ14年ほど住んでいましたが、多少むちゃはあるものの日本を飛び出してきてエネルギッシュなあの街でたくましく生きている若者は少なくありませんでした。英語もそれこそ生きるための糧として必死に学んでいるという感じでした(もちろん全員が全員ではありません)逆に企業から派遣されて、始終日本人とだけつるんで英語もままならないまま帰国していく中高年の方もたくさん見てきました。そんな中で、海外にほとんど住んだ経験もない人間がメディアを通じて炊きつけている"若者世代の引きこもり論"に対しては以前から疑問を持っていました。
そうした中、探検隊の皆様とお会いして、現代の若者が内に秘めている国際感覚や前向きな姿勢というものをなんとなく感じ取りました。ただ、不思議なのは、こういう企画に参加してくるのは、女性のほうが圧倒的に多いという点ですね。このあたりの疑問については、いつか機会があれば日本在住の若い男性からぜひ聞いてみたいなと思っています。
皆さんが今回の遠征(探検隊なので)を通じて得たものは沢山あると思います。若くて経験がないのは当たり前の話です。ですので、今回の経験もさながら、これからも様々なことに挑戦(国内外で)し続け、ぜひ経験を積み上げていってもらえればと思っています。そうした挑戦を支援していくのも私たち海外に住む経験者の役割かと思っております。
一方、今回の企画は、大学側の試みとしても非常にいいプログラムだと思います。民間企業でのインターンを組み合わせ、各自に研究テーマを持ったところも工夫が凝らされているなと感じました。
最近では"大学の国際化"の声があちらこちらから聞こえてきます。留学生の受け入れもさながら、今回の海洋大学が行ったような海外研修プログラムも積極的に進めていくことは、大学の国際化の第1歩となるでしょう。さらに、グローバルキャリアを本当に推奨していきたいというのであれば、しかるべき部署を設置し、そうした経験のある人間を常駐させる必要があると思います。
まったく海外に住んだこともない人達だけでグローバルキャリアの指導に携わってもあまり意味がありません。それだけではまだまだ程遠いです。学生もさながら、大学側の人々の意識改革も必要であり、それを意識したプログラム構築が今後必要になってくるのではないかと思います。個人的な意見ですが、少しでもご参考になれば幸です。
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