ブックタイトルkaigaitankentai_10_shuusei
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kaigaitankentai_10_shuusei
32台湾はかつて日本に統治されていました。しかし、その事実を知る人は多くても、日本語世代と呼ばれる人々が現在も存在することを知る人は多くはありません。自分もその一人でした。玉蘭荘はそういった日本語世代の方々のためのグループホームであり、私は今回で二度目の訪問でした。前回の訪問時から1 年の時間が経ちましたが、私のことを覚えてくださっている方々が多く、心が熱くなりました。会では日本の歌を歌ったり、グループに分かれてそれぞれ昔の話を聞いたりしました。私にはもう祖父母がいません。しかも祖父に至っては最後の別れを告げることができませんでした。そんな思いもあり、ここに来ると本当に自分の祖父母に会えたような気持ちになります。玉蘭荘の方々はとても聡明で、下手をすると日本にいる自分たちよりも日本について詳しいと感じることがあります。私は日本から帰国後に名古屋へ旅行を計画していましたが、その話をすると次々にお勧めのお店やツアーを提案してくれて一体どちらが日本在住なのか分からなくなります。会が終わりに近づくにつれて寂しさが込み上げてきます。すると、私を囲んでくれていたご婦人方がこぞってお菓子をくれます。とめどなくカバンからお菓子を取り出し、これも食べなさいねと渡してくれるのは世界中の「おばあちゃん」の共通した行為なのでしょうか。しかし、そんなことをされるとまた、自分の亡き祖母が昔してくれていた事を思い出し余計に切なくなりました。玉蘭荘に来られる方々はすでに八十代を超えている人が大半です。これは彼らの世代を考えれば当然です。一方で、その溌剌とした話し方や話題の豊富性を鑑みるとむしろ自分の方が元気がないのではないかと思う時があります。ここに来ると本当に元気をもらうことができます。彼らの過ごした青春時代は決して明るいものではなかったと思います。以前来た時に、子供のころの遊びは何かと訊ねたら、そんなことしている時間はなかったよとピシャリと言われたことを思い出します。しかし、彼らの話ぶりや生き方は非常にポジティブであり、アグレッシブでさえあります。まるで、それまで自分が悩んでいたことがとても些末なことのように思えてくるから不思議です。私は今後も台湾に来ます。そしてその度に玉蘭荘に足を運びたいと思います。台湾は親日と言われるが、その理由は決して単純なものではありません。しかし、やはり親日なのだと二度目の台湾、二度目の玉蘭荘に来て改めて思いました。彼らの好きな日本を私も誇りに思います。田辺傑作玉蘭荘