ブックタイトルkaigaitankentai_12
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46写真は北緯69 度のノルウェー、アルタに後ろのプロペラ機で到着した際の写真です。西村大樹DikuDiku はノルウェーの教育行政省の下、高等教育の質向上のため、海外教育機関との連携、それに伴う留学機運の上昇、また最先端の教育システムの普及、初等、中等教育との連携などの試みを行っている機関です。ノルウェー、ベルゲンにて、ノルウェーの教育制度を担うDiku という組織に訪問し、スタッフの方々と議論を行う機会がありました。そこで感じたことをここにまとめさせていただきたいと思います。議論についてですが、スタッフの方々からまずノルウェーの教育制度の概要、特徴などの説明があり、疑問点や日本との相違点、意見の交換等を行いました。この議論を通して私が感じたのは、無償教育の多大なる影響についてです。ノルウェーと日本の教育制度の違いといえば、やはり最も大きいのは学費が無償か有償かということになると思います。ノルウェーでは初等、中等教育期間だけでなく、高等教育、つまり大学、大学院に至るまで学費がずっと無償です。これは学生の懐に優しいというだけでなく、学生の自立に大きく寄与していることに気付きました。日本では大学生は親に学費を払ってもらう、ないしは要返済の奨学金をもらうといった形が主流となると思いますが、ノルウェーでは前述の通り学費を払う必要がないので、学生はこの時期から親元から経済的に自立できるのです。これをきっかけに実家を出て一人暮らしを始める学生も多いらしく、こうなれば完全に自立した生活を送っていくことになります。これは何でも自分でなんとかしていかなければならなくなるのと同時に、親の考え方、価値観に影響を受けにくくなります。このことにより、今度は自分で物事を判断し、全て自分で決定していくことが可能になります。この能力はこれからの加速するグローバル化の波、大きく変動する社会の流れに対応して生きていくために必須の能力だと思われています。それを自然な流れで多くの学生が獲得することができるようなシステムになっているというのは無償教育の副作用的な効力として無視できないものであると思います。ただここで注意しなければいけないのが、では日本も教育を無償化すればよいかといえばそうではないということです。ノルウェーの例は一つのモデルケースでしかありません。これを参考に、より良い教育のため、日本は日本のやり方を模索していく必要があります。何が学生のためになるのか、これからの時代を生きていくためにどんな能力が要求されるのか、そのためには何をすればよいのか、既存のやり方にとらわれず、考え直す必要があると思います。ノルウェーの教育の制度や特徴から、日本の教育を考え直すよい機会となりました。