ブックタイトルkaigaitankentai_13
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kaigaitankentai_13
53海洋電子機械工学科2年今野魁人シンガポールプログラム今日から私たちシンガポール隊は研修先をスイッチする。私と聡一朗はApollo での研修スタートとなった。Qian-Hu は観賞魚のみを扱う水産養殖会社であったがこのApollo は食用魚の養殖にも力を入れている。今回のインターンではそのことを意識しつつ、研修を行う。午前課業は、濃度滴定から始まった。これは養殖場の水槽内に存在するCO2、NH3、Mg、Kの濃度を調べることで水槽内の環境を知ることを目的としている。魚は哺乳類のようにストレスや苦痛を声などで表現できない。体調の悪さや苦しさを魚は表現できないからこそ私たち人間は、それを感じさせることないような環境を常に用意する必要があるのだ。滴定の方法だが、中高生の頃に化学の時間で行うような滴定実験とは違って簡易的検査キットを用いて非常に楽に行うことができた。しっかりとミスなく行えて、これならば多数の水槽の濃度を管理することも、比較的楽に行えると感じた。次に魚の解剖を行った。魚に寄生虫は付きものであるということは魚の生食文化が根強い日本人には馴染み深いのではないだろうか?この課業は水槽内から1 匹魚を取り出し、内蔵やエラなどを解体してマイクロスコープで覗くことで寄生虫の存在を確かめるというものだ。寄生虫の存在が確認されたら薬によって水槽内をクリーンにするという。ここで私は、養殖魚にも寄生虫が存在するのかという疑問が感じた。そのことを聞いてみると、私たち海洋工学部生にも馴染み深いような返事が返ってきた。養殖魚の稚魚やエサは全てが完全養殖されているわけではない。海で稚魚として捕獲して水槽内で飼育し、成魚に育てる種類もいるとのことだ。寄生虫はこの捕獲時にやってくる。稚魚の体内だけでなく、海水内に含まれる寄生虫がそのまま水槽に混入してしまうことがあるという。これは船舶の「バラスト水における問題」とよく似ている。バラスト水とは、船舶のバラスト(重り)として用いられる水のことである。 貨物船が空荷で出港するとき、港の海水が積み込まれ、貨物を積載する港で船外へ排出される。そこに含まれている水生生物や寄生虫が外来種として生態系に影響を与えてしまうという問題が海運業界には存在するのだ。完全な対策は海運業界でも見つけられていない。やはり、このApollo 社と同様に未然に防ぐというより、発見次第駆逐するという手法が現状の最適解なのかもしれない。午後課業で行った菌の培養だが、これは本当に楽しかった。ドラマで見るようなラボで、高価な実験器具を用いて菌を培養したのである(培養結果は明日の研修でわかるのだが)。目的は水槽の中にいる菌を調べるというものだった。午前に行った濃度滴定もだが、正直海外から来たインターンシップ生にこのような重要な仕事を研修させてもいいのかと良いのかと思ってしまった。もちろん補助として見てくれてはいるのだが、菌の発見を逃し、適切な濃度測定結果でないまま放ってしまったら、水槽が全滅しかねない重要な仕事である。私は、こうして研修生として受け入れてくれて、このような貴重な経験をさせていただけることを本当に幸運に感じた。私たちをアシストしてくれる人はもちろん、この本プログラムの受け入れ先の企業の方は海外探検隊に参加する学生の未来のために協力してくれているのだ。それに、私は海洋工学部生である。今日このような仕事をしたと話せば、参加したかったと思う海洋科学部生はたくさんいると思う。こうした機会が海洋大学に存在し、私が参加できていることの意義を改めて考え、これからのキャリアに必ず繋げる。(2019 年8月13 日)