海外探検隊23期生報告書
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石井千晴 ベトナム科学技術アカデミー(VAST)の 2週間にわたる研修では、講義と実験を通して微細藻類について学習しました。 講義では、微細藻類の分類と微細藻類が原因で起こる被害について学びました。人間が毒性を持った藻類を捕食した魚類を体内に取り込むことで引き起こされる食中毒の被害と、藻類が水中で大量に繁殖することで酸素濃度が減少し魚類が死亡するとともに海面が変色する赤潮の被害があることが分かりました。藻類の毒素は魚にも人体にも悪影響を及ぼし最悪の場合は死に至りますが、一般的に無味無臭のため認識するのが困難です。日本では魚介類を輸入・販売する際に厳しい規制がかけられるため高い安全性が保証されていますが、世界では規制の基準が低かったり販売者の食中毒に関する知識が乏しかったりすることで被害が絶えない国もあるといいます。これはベトナムだけにとどまらず水産業界の大きな課題であるため、日本のような安全対策を世界レベルで構築する必要があると感じました。流通情報を専攻している私にとっては一見すると藻類の研究は関連性のないもののように思っていましたが、世界貿易と食品流通という点において重要な関係を持っていることが分かりました。 講義の後は、まず顕微鏡を用いて様々な微細藻類の観察を行いました。この時使用したサンプルは実際に私達が西湖という場所で採取してきました。色や形、大きさ、細胞の構造がそれぞれ特徴的だったり運動性細胞と非運動性細胞があったりと、違いを楽しみながら観察することができました。 他にも、微細藻類を培養する方法の学習と微細藻類に含まれる脂質、炭水化物及びたんぱく質量を測定する実験を行いました。培養の際はベトナム最大の主要な科学研究機関であり、国の科学技術の発展やグローバルな課題の解決に貢献している。その研究分野は物理学、化学、生物学からバイオテクノロジー、材料科学、宇宙技術まで多岐にわたる。 顕微鏡で微細藻類を観察している様子です。スピHUSTの図書館の前で研究室メンバーと一緒にルリナやクロレラなど6種類を観察しました。 撮った写真です。 慣れない作業だった上にフラスコ内に細菌が付着しないように常に注意して工程を進めなければならなかったため、とても大変でした。実験ではマイクロピペットや遠心分離機など初めて使う実験器具に戸惑ったり電子天秤で薬品を0.1グラム単位まで正確に測り取るのに苦戦しましたが、研究室の職員や研究生の方々のサポートのおかげで楽しみながら実験を進めることができました。 VASTの研修を通して微細藻類と私たち人間の生活との関係性や水産業界におけるグローバルな課題について学ぶことができました。生物学に詳しくない私にとっては少し難易度の高い講義と実験でしたが、だからこそ新鮮で貴重な経験となりました。また、3人のメンバーからの知識の共有や、VASTの方々による丁寧な解説により、印象に残る深い学びを得られました。非常に有意義な2週間でした。ありがとうございました。 7 ベトナム科学技術アカデミー

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